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よこたはじめ-横田一

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よこたはじめ-横田一
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小池百合子の排除発言を引き出したとして一躍有名になったフリージャーナリストだが、良くも悪くも無事では済まないだろう。誰かにとってはヒーローだが誰かにとっては恨み骨髄の存在。賞賛されるも恨みも買うだろうから、油断大敵だ。
  1. 小池百合子の偶像を取り払い本質を露呈させた功績は評価すべき。




http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53285

「排除」発言を引き出した記者が見た「小池百合子の400日」
なぜジャンヌ・ダルクは墜ちたのか
横田 一
「あの会見」が全ての始まり

安倍政権打倒の先頭に立つはずの希望の星、改革の旗手が一転、リベラル派の「大量虐殺」に手を下す「詐欺師」に豹変したのでは――国民にこんな疑念が浮かんだきっかけは、9月29日の都知事会見だったことだろう。

「前原代表を騙したのか、(それともリベラル派排除のために、前原氏と)共謀したのか」との私の質問に対し、小池百合子都知事(希望の党代表)が笑みを浮かべながら「排除します」と断言した時のことだ。

その4日前の25日午後、安倍晋三首相の解散表明会見の直前に、小池氏は新党・希望の党結成と代表就任、そして「原発ゼロ」を掲げることを表明していた。電波ジャックに成功すると同時に、「原発ゼロ」を訴え続ける小泉純一郎元首相とも面談して激励を受け、「脱原発の旗の下に非自民勢力が結集し、原発推進の安倍政権を打倒するのではないか」という期待感が一気に高まった。

だが、小池氏は千載一遇のチャンスを自ら逃した。民進党の前原誠司前代表が、28日の同両院議員総会で「安倍政権打倒のために1対1の対決に持ち込む。排除されることはない」と説明し、民進解体・希望合流が満場一致で了承されたにもかかわらず、その翌29日、急失速を招く「排除」発言を口にしてしまったのである。

私は小池氏が都知事に就任した昨年8月以降、毎週金曜日の14時に行われる小池都知事の定例会見に、できる限り出席するようにしてきた。

しかし、小池氏の「記者選別」はトランプ大統領並みで、詳しくは後述するが、質疑の際には「お気に入り」の記者を明らかに優先して指すのである。フリーランスで、なおかつ小池氏にとって耳の痛い質問をすることが多い私は指されないことがほとんどだったが、この日は偶然か、半年ぶりに指名された。

そこで冒頭のように、民進党との合流に関する前原代表の説明との食い違いについて聞いてみたのだ。
どこか様子がおかしい…

横田:前原代表が昨日、所属議員向けに「希望の党に公認申請をすれば、排除されない」という説明をしたのですが、一方で(小池)知事、(希望)代表は「安保、改憲を考慮して一致しない人は公認しない」と(報道機関に話している)。(前原代表と)言っていることが違うと思うのですが、前原代表を騙したのでしょうか。それとも共謀して、そういうことを言ったのでしょうか。二人の言っていることが違うのですが。

小池知事:すいません。その質問は場所を転換してからお答えさせていただいた方がいいと思いますし、(筆者が?)「独特の言語」を使っていらっしゃるなと今思ったところです。

4日前に小池知事が希望の党代表に就任したために、この日の定例会見は2部制(前半が都政関連、後半が国政関連)になっていた。そこで私は第1部での質疑応答を止め、第2部で再び同じ質問を繰り返した。

横田:前原代表が昨日(28日)発言した「(希望の党に)公認申請をすれば、排除されない」ということについて。小池知事・代表は、安保・改憲で一致する人のみを公認すると。前原代表を騙したのでしょうか。共謀して「リベラル派大量虐殺、公認拒否」(を企てた)とも言われているのですが。

小池知事(=代表):前原代表がどういう発言をしたのか、承知をいたしていませんが、『排除されない』ということはございませんで、排除いたします。取捨(選択)というか、絞らせていただきます。

それは、安全保障、そして憲法観といった根幹の部分で一致していることが政党としての、政党を構成する構成員としての必要最低限のことではないかと思っておりますので、それまでの考えであったり、そういったことも踏まえながら判断をしたいと思います。

現下の北朝鮮情勢などで、これまでの議論に加えてリアルな対応を取っていこうと考える方々もいらっしゃるので、そういったところもしっかり皆様、希望の党から出馬されたいという方を絞り込ませていただくことでございます。ちなみに、その作業は私どもの方では若狭(勝)議員、そして民進の方から玄葉(光一郎)議員が絞り込みの作業に入るということで基本的に任せているところです。

横田:ということは、「安倍政権打倒」を甘い言葉にして、リベラル派大量虐殺、公認拒否・排除をしたということになりませんか。「(綱領にある)寛容な保守」であれば、ハト派からタカ派まで包み込まないのですか。公認しないのですか。そうしないと、安倍政権を倒せないのではないですか。

小池知事:多様性に富んでいるということは、これ(会見)で証明していることになります。とても寛容な記者クラブで…(と言って、私の質問に答えるのをやめて次の記者を指名)。

この「排除いたします」「取捨」という強い言い回しには正直、私も驚いた。驚いているうちに、小池氏は都庁記者クラブと会見そのものに話をすり替えてしまった。いま考えると、小池氏自身も直前の「排除」発言を「まずい」と思い、焦って話題を変えようとしたのかもしれない。

去年7月の都知事選を皮切りに、2月の千代田区長選、そして7月の都議選と、連戦連勝を繰り返してきた小池氏を1年あまりウォッチしてきた私には、これが「勝負師らしからぬ失言」としか思えなかった。

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http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53285?page=2

「排除」発言を引き出した記者が見た「小池百合子の400日」
なぜジャンヌ・ダルクは墜ちたのか
横田 一

リベラル派を排除すれば、別の新党結成、ひいては野党乱立を招く恐れがあるのは予測できたはずだ。にもかかわらず、小池氏は自らの首を絞めるような愚行を始めてしまった。小池氏の「排除」は単なる失言ではなく、事実だった。

案の定、その後「排除」されたリベラル派議員を中心に立憲民主党が結党、希望の党を上回る議席を獲得し、野党第一党となったことは皆さんもご存知の通りだ。
止められる側近がいなかった

「女帝」のご乱心を止める側近がいなかったのも致命的だった。立憲民主党の結成前にこの「排除発言」を撤回し、「公認申請者は排除しない(全員公認)」と方針変更をしていれば、失速を避けることも可能だったに違いない。

しかし実際に希望幹部が反省の弁を口にしたのは、立憲民主党の結党後。希望の公認候補を決める民進側の窓口だった玄葉光一郎・元外務大臣は「(排除)発言がなければ、希望の党は200議席に迫る勢いだ」(13日)、「『排除』という言葉を使わなかったら、今ごろ自民党と競っていた」(18日)と悔やみ、小池氏もBSフジの番組で「きつい言葉だったと思うが、政策の一致(が重要)ということを申し上げたかった」と釈明したが、時すでに遅しであった。

ネット上では、小池氏のイメージダウンを招く映像が急速に広がっていった。私が「前原代表を騙したのか」と聞いた瞬間、小池氏はにやりと笑ったのだが、その様子を映した動画が「『前原をだました?』に『ふふふ』さすが緑のタヌキ(笑)」といった説明付きでSNSで拡散されたのだ。

わずか1年前の都知事選では、自民党から公認がもらえずに崖から飛び降りるように出馬し、「草の根改革派」として大勝した小池氏が、今回は一転、一手に公認権を握って「リベラル派大量虐殺」を断行する独裁者となったーージャンヌ・ダルクを彷彿させる善玉のイメージから、「女ヒトラー」(日刊ゲンダイ命名)のような悪玉イメージに変わってしまったのだ。

10月22日の投開票日を迎え、蓋を開けてみると、7月の都議選圧勝が幻だったかのように、お膝元である東京都の小選挙区でも希望の党は惨敗した。

その原因は、容易に推定できた。都議選で、自民党の歴史的惨敗と都民ファ―ストの会圧勝を実現した立役者である野田数・特別秘書(前・都民ファ代表)と選挙プランナーの松田馨氏が、今回の総選挙には一切関わっていなかったのだ。

「小池代表以外で候補者選定に関わっていたのは、産経新聞出身の事務総長のO氏と小池氏と懇意なジャーナリストのU氏で、リベラル派排除を進めたのはO氏と囁かれていました。都議選では、水面下の調整を含めた陣頭指揮を取った野田氏と、選挙プランナーとして候補者に指南をした松田氏が都民ファ圧勝に大きく貢献しましたが、今回の総選挙では2人とも外されていたようです」(都政関係者)

天下分け目の決戦で、実績抜群の有能な「部下」をわざわざ外し、先の読めない不寛容な側近で脇を固めたことが、都議選と正反対の惨敗を招いた主因ではないか。
皆「寛容」を期待していたのに

3ヵ月前の都議選で都民ファは、公明党や連合、民進党離党者などの非自民勢力を幅広く結集し、自民党を歴史的大敗に追い込んだ。その時に掲げたのが「情報公開」の旗印。森友・加計問題での安倍政権の情報隠蔽体質に対する批判が高まっていることと、都が情報公開を進めていることを重ね合わせ、争点化したのだ。

6月1日の都民ファ総決起大会の囲み取材で、私が「(都議選を)『ブラックボックス化の自民党』対『透明化の都民ファーストの会』という構図と捉えていいのでしょうか」と聞くと、小池知事は笑顔でこう答えた。

「たまにはいいことを言ってくれますね。ありがとうございます」

小池知事と入れ替わるように代表から幹事長となった野田氏も、次のように勝因分析をしていた。

「勝因は、自民党の体質が表面化したためだと思っています。今回の都議会選挙が注目を浴びたのは、小池都政が情報公開をすることによって、都政の様々な課題が浮き彫りになった結果です。選挙の大きな争点は『情報公開を進める都民ファーストの会』対『隠蔽体質の自民党』。都議選でしたが、国(安倍政権)の隠蔽体質に『NO』を突きつけたのです」

前述の通り都民ファは都議選で、やり手の若手選挙プランナーの松田氏を選挙対策に抜擢していた。去年11月12日の小池政治塾「希望の塾」第2回で講師を務めた松田氏は、2006年と2010年の滋賀県知事選で嘉田由紀子・前知事の連続当選にも貢献した人物だ。

ちなみに小池氏と嘉田前知事には、女性知事以外の共通点がいくつもある。2人とも環境保護推進派で、選挙のシンボルカラーはグリーン、そして知事選で自公推薦候補を打ち破った。しかも松田氏は2012年12月の総選挙で、嘉田氏が知事と「日本未来の党」代表を兼任した際にも選挙プランナーを務めていた。野党が乱立して自公が圧勝、第2次安倍政権が誕生した時のことである。

「今回の総選挙で小池氏が、都議選圧勝に貢献した松田氏や嘉田前知事に助言を求め、野党乱立(日本未来の党・民主・維新・みんなの党)を招いた当時の失敗談に耳を傾けていれば、あの『排除』発言を口にすることはなかったかもしれません」(永田町ウォッチャー)

私の質問の主旨は、「『安倍政権打倒』という目標と『リベラル派排除』は両立しうるのか」という疑問を呈示することだった。「『寛容な改革保守』という党の綱領に従って、公認申請をする民進前議員を全員受け入れ、ハト派からタカ派まで包み込む非自民勢力の結集を実現することこそ、政権交代には欠かせないのではないか」と言い換えることもできるが、この問いかけに小池氏は答えようとしなかった。

人選ミスに加えて、小池氏自身の聞く耳を持たない「独裁的体質」が転落に拍車をかけたのではないかと思う。

選挙の後、私のもとには「よくぞ質問してくれた」という声も、「あんなことを聞かなければ、希望の党は安倍政権を倒していたかもしれないのに」という声も両方届いている。

確かに、あの会見で私が質問をしなかったら、あるいは私が半年ぶりに小池氏に指されなかったら、選挙の結果はかなり違ったものになっていたかもしれない。また個人的には、自民党を再び大勝に導く遠因を作ってしまったと思うと、複雑な気持ちではある。

しかし一方で、小池氏が「排除」した民進党リベラル派はすぐに立憲民主党を作り、安倍政権に批判的な民意の受け皿となった。彼らが希望の党にいったん合流したとしても、遅かれ早かれ、袂を分かつ日は来ていたはずだ。その日が早まっただけだと考えれば、むしろ選挙後の混乱を未然に防ぐことになったのかもしれない。


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http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53285?page=3

「排除」発言を引き出した記者が見た「小池百合子の400日」
なぜジャンヌ・ダルクは墜ちたのか
横田 一
おまけ:記者も「排除の論理」?

最後に、小池氏の会見スタイルについて少し補足をしておこう。氏はテレビなどでもおなじみの通り、質疑応答の際には笑顔を絶やさずに丁寧な口調で受け答えをする。しかしその一方で、質問者を選別し、私のような記者には質問の機会をほとんど与えない一面がある。小池氏は去年の夏以降、都知事としての記者会見でも「排除の論理」を徹底してきたといえる。

このことは、定例会見と臨時会見における記者別指名回数を順位づけした「都知事会見の指名回数順位(“好意的記者”ランキング)」を見ると、一目瞭然だ。

ちなみに、私が小池氏の「ブラックリスト」に載った質問と見ているのが、2回目の指名となる昨年8月13日のもの。私はこの時、築地市場の移転問題について、市場関係者との面談を非公開にしたことを問い質したのだが、これ以降、約半年も指されない状態が続いた。

そこで私は「都知事会見指名回数順位表(お気に入り記者ランキング)」(表1)を作成してネット媒体の「リテラ」に掲載した。すると、その約1週間後の3月10日、半年ぶりに指名された。





(表1)2016年8月〜2017年2月24日までの定例会見・臨時会見における指名回数

しかしその後は、再び指されない状態が続くようになったので、今度は月刊誌「創」2017年9月号に、今年7月までの情報を追加した最新版(表2)を掲載してもらったところ、9月29日に半年ぶりに当てられたのだ。





(表2)2016年8月〜2017年7月21日の指名回数

この表にある日テレの久野村記者やTHE PAGEの具志堅記者は、直近の会見でも私よりはるかに頻繁に指名されている。ランキング2位の具志堅記者は、10月6日と13日に両方とも指された。久野村記者は、13日の囲み取材で私が質問したとたん「囲み終了」が宣言されたにもかかわらず、そのあとで追加質問が許される特別扱いを受けていた。

とにもかくにも、有権者の審判は下された。「排除」というただ一点によって、これまでの破竹の勢いを大きく削がれることとなった小池氏。これから東京五輪へ力を振り向けてゆくこととなる都政を、また国政政党となった希望の党の舵取りを、まっとうすることはできるだろうか。

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